先日、恥骨部の痛みを主訴に受診された患者さんの診察をしました。
70歳代の女性の患者さんです。
恥骨部の痛みは、肺癌からの骨転移が原因でした。
比較的珍しいケースで注意が必要と思いますので、今回書いておきます。
転移性骨腫瘍とは?
転移性骨腫瘍とは、他の臓器に発生した悪性腫瘍が、血流やリンパ流を介して骨に転移した状態を指します。
骨そのものから発生する「原発性骨腫瘍(骨肉腫など)」とは異なるものです。
癌細胞が骨に入り込むと、骨を壊す「溶骨(ようこつ)性病変」や、骨を硬くする「造骨(ぞうこつ)性病変」を起こし、痛みや骨折などの原因になります。
転移性骨腫瘍が生じやすい癌、悪性腫瘍は?
転移性骨腫瘍が生じやすい臓器として、乳癌、前立腺癌、肺癌、甲状腺癌、腎癌などがあります。
今回は肺癌のケースでしたので、転移性骨腫瘍が生じやすい臓器ではありました。
肺癌の骨転移はどこに起こりやすいか?
肺癌の骨転移は、肋骨、椎骨に多いとされます。
今回は恥骨への転移でしたが、骨盤骨も好発部位ではあるので、十分起こり得る部位です。
転移性骨腫瘍の画像診断は?
肺癌の骨転移は、骨融解像を示します。
骨融解像とは、骨が溶けたように透けて見える所見です。
溶骨(ようこつ)性の変化ともいいます。
画像診断の方法として、
・レントゲン(単純X線)
・CT
・MRI
・骨シンチグラフィー
・PET/CT
などがあります。
ただ、クリニックなどでは、画像装置は限られますので、レントゲン(単純X線)やCT、MRIでまず診断されることが多いかと思います。
今回私はCTで診断できましたが、初期ではレントゲン(単純X線)で分からないこともあるので、注意が必要ですね。
ある程度見慣れていると、溶骨性の変化が分かりますので、悪性腫瘍の存在を疑うことができます。
ただ、癌と診断されていることがあらかじめ分かっていれば診断がつきやすいのですが、そうでない場合は悪性腫瘍の存在の発見が遅れる可能性があります。
緊急に対応すべき骨転移
転移性脊椎腫瘍などでは、脊髄の圧迫によって数時間で麻痺が完成することもあり、緊急性があります。
私も脊椎・脊髄外科チームにいた頃は、何度も緊急の手術を経験しました。
また、高度な高カルシウム血症になると、意識障害、急性腎不全などが生じ、生命に危険が及ぶこともあり、治療を急ぐケースもあります。
まとめ
骨の痛みの原因として、「悪性腫瘍の骨転移」の可能性を常に忘れないことが大切。
早期の診断、治療を行い、患者さんの痛みや苦しみの緩和につなげていきたいと思います。