あなたは、怪我をしたときにRICE(ライス)という処置が大切であることを聞いたことがあるかもしれません。

日常生活やスポーツで起こるケガ(打撲、捻挫、靭帯損傷、骨折など)に対して、応急処置の基本として広く推奨されているのが RICE処置 です。

一般のかたでもすぐに行うことのできる有用な方法です。

しかし、外来診療をしている中で、意外と知らないかた、できていないかたもいらっしゃると感じましたので、ここで解説します。

RICEの4つの基本要素

★Rest(安静、固定)
安静にすることで、損傷部位へのさらなるダメージを防ぎます。

受傷直後は患部をできるだけ動かさず、無理に使用しないことが大切です。

関節周囲の損傷や骨折などがある場合は、外固定を行う場合もあります。

★Icing(アイシング:冷却)
氷やアイスパックで患部を冷やします。

冷却は血管を収縮させ、腫れや出血を抑える効果があります。

冷却による末梢神経への直接的な作用で除痛効果もあります。

アイシングは意外と忘れられがちで、数日経っても有効な場合もありますので、急性期には積極的に行って頂きたいです。

★Compression(圧迫)
弾性包帯などで適度に圧迫し、腫れや内出血の進行、浮腫を防ぎます。

ただし強く巻きすぎると、血流障害を起こす危険があるため、指先の色や感覚に注意が必要です。

★Elevation(挙上)
患部を心臓より高い位置に上げることで、血液のうっ滞を防ぎ、腫れや浮腫を軽減します。

寝ている間や安静時に効果的です。

枕などを利用すると効率が良いです。

なぜRICEが重要なのか?

RICEは「ケガを治す」治療そのものではありません。

しかし、受傷直後に適切に行うことで、腫れや出血を最小限に抑え、その後の回復をスムーズにします。

反対に、初期対応が遅れると腫れや痛みが強くなり、治癒が長引く原因にもなります。

程度が強いと「コンパートメント症候群」という不可逆的な筋肉の壊死や神経障害が起きてしまうこともあり、外傷後の急性期にはRICEがとても重要です。

私も今まで、コンパートメント症候群が生じたかたに対し、筋膜切開(減張切開)を行った経験が何度かあります。

その治療はかなり大変で、残念ながら後遺症が生じたケースも経験しています。

まとめ

外傷後の応急処置として、RICEはとてもシンプルで効果的な方法です。

スポーツ現場や日常生活でのケガをしたときに、この処置を理解しておくことは、回復を早めるだけでなく、重症化を防ぐことにもつながります。

症状がひどくなったり後遺症を残して悲しむ患者さんが一人でも減って欲しいです。

ぜひ覚えておいてください。